Captive 5

「社長。まだ終わってないぞ」
カイルゲイトに頬を叩かれ、一瞬、飛ばした意識を引き戻される。
「そんなに気持ち良かったか?」
あざ笑うように言われ、また拳を回され、ルーファウスは、ぶるぶると身体を震わせた。
「次は、きついぞ。がんばれよ」
カイルゲイトの声とともに、拳が、奥に突き込まれてくるのを感じ、ルーファウスは、目を見開いた。
指の骨が、内壁をえぐりながら、身体を押し開いていく。その苦しさは、ボトルで身体を開かれた時の比ではなかった。
恐ろしい圧迫感に恐怖がこみ上げてくる。
「社長。死ぬなよ」
囁かれ、拳がぐいと突き上げられた。
「ああああああっ」
ルーファウスの喉から、絶叫が迸った。
内臓を直接殴られる感触に、吐き気がこみ上げる。奥に埋め込まれたままのバイブも一緒に、さらに奥に突き上げられ、激痛に、また悲鳴をあげる。
だが、一度で終わりではなかった。
容赦なく、何度も、拳を突き上げられ、ルーファウスは悲鳴を上げ続けた。このまま、殺されるかもしれない、とすら思うほど、それは凄惨な凌辱だった。
だが、拳を浅いところまで引き抜かれ、一気に、また奥まで突きこまれると、再び、あの激しい快感が襲いかかり、ルーファウスは惑乱した。
痛みと前立腺を抉られる激しい快感に、身体が引き裂かれ、どうしていいかわからない。苦しいのか、快感なのか、それすらもわからず、拳で身体を抉られ突き上げられながら、ただひたすら、呻き、喘ぎ、悲鳴をあげるしかなかった。
ようやく、バイブを掴んだカイルゲイトの手が抜き出されたときには、ルーファウスは、ぜいぜいと喘ぎ、目を見開いたまま、がくがくと全身を激しく震わせていた。
「こんなもんだろう」
カイルゲイトが冷たい声で言い、ベッドから降りる。
「うわ………すごい開いてるぞ」
大きく開かれたルーファウスの足の間を覗きこみ、男が呟くように言った。
ルーファウスのそこは、赤い粘膜を見せ、大きく開かれたまま、体内に残されていた男たちの欲望の残滓を滴らせていた。
「すごいな、これは……」
誰かが言い、喉をごくりと鳴らした。
「二本挿れてみろ。たぶん、いける」
カイルゲイトの言葉に、後ろからルーファウスの身体を抱いていた男が、その両足を抱えあげるようにして、己を埋め込んだ。
「んんっ…!」
「社長、力抜けよ」
男はルーファウスの耳元で囁くと、己を埋め込んだまま、その腰を、前に突き出させた。
前から、別の男が、すでに屹立を受け入れ、ぎちぎちに広がっているところに指を押し当てると、ぐいと、押し込んだ。
「あああ……」
圧迫感に、ルーファウスは呻いた。
だが、残酷に広げられた後腔は、押し込まれるままに、男の指を受け入れていく。
「お、入っていくぞ。これはいけそうだ」
男は、押し込んだ指で、さらにルーファウスの後腔をぐいぐいと開き、そこにできた隙間に、すでにいきり立った自分の怒張をぐいと押し当てた。
なにをされようとしているかに気づき、ルーファウスは、必死で抵抗しようとした。
だが、もう、指一本すら、自分では動かすことができず、絶望に目を見開き、のしかかる男を見つめるしかなかった。
「社長、挿れるぞ」
その言葉と同時に、すさまじい痛みがルーファウスを襲った。
「…………ぐっっ……」
息を詰まらせ、宙を見据える。
狭いそこをこじ開けるようにして、硬い凶器が、じわりじわりと埋め込まれていく。
「きついな……っ・…おい、そっち、ちょっと出せ」
「ああ」
後ろから奥まで埋め込まれていたモノが、少し、抜き出される。
同時に、前から先端だけ入れられていたものが、ぐっと少し奥に入り込んだ。
「これでいけるかな」
後ろから、男が腰をゆすり、ルーファウスの腰をがっちりと掴んだ。
「よし、突っ込むぞ。社長、切れないように、緩めとけよ」
ずるり、と前から、硬く熱いモノが埋め込まれた。
「っ……っう………っ………!」
恐ろしい力で、身体の中心を押し広げられる。
後ろから腰を押さえられ、前から、体重をかけるようにして、もう一本の怒張が、ゆっくりと押し込まれてくる。
身体を二つに引き裂かれるような痛みと、恐ろしい圧迫感に、気が遠くなる。
ぐっぐっと、熱く硬いモノが、ルーファウスの身体を押し開きながら、次第に押し込まれ、ようやく、前からのしかかる男が腰の動きをとめ、息を吐いた。
「全部……入ったぜ……社長」
唇を舐め、情欲にまみれた声で、言う。
「こっちも奥まで挿れるぞ」
耳元でささやかれ、後ろから、腰を揺すられ、埋め込まれていたものが、ぐい、とさらに奥まで押し込まれた。
信じられぬほど奥まで、大きく身体を開かれ、見開かれたルーファウスの目から、また涙がぼろぼろと零れ落ちた。
「よし……入った」
「すげーな。入ってるぞ」
横で見ていた男たちがごくりと喉を鳴らした。
「動くか」
ゆっくりと、身体の中で、二本の屹立が動きはじめた。
「……はっ……っ……」
「これは……いいな……っ…」
「ああ……すごいなっ……」
「や……め……っ……」
前後から腰を押さえられ、ずるり、ずるり、と身体の中で凶器が動く。はじめは、ゆっくりだったその動きが、次第に激しいものに変わっていくのに、時間はかからなかった。二本の凶器が、好き勝手に身体の中で暴れまわり、その痛みと苦しさに、ルーファウスは、ただ唇を震わせた。
だが、同時に、ルーファウスは、恐ろしいことに気づいていた。
二本の硬い切っ先に、内壁を抉られ、奥まで身体を押し開かれながら、じわじわと身体の奥で沸き起こり始めたもの、それは、明らかな快感だった。
前立腺をぐりりと抉られ、同時に、奥まで押し込まれていたもう一本の屹立に、最奥まで貫かれ、身体を震わせる。
これほど、おぞましい凌辱の中で快感を得る自分など、許せるものではなかった。必死で否定しようと、力なく首を振る。だが、二本の屹立に突き上げられ、内壁を抉られながら、身体は容赦なく追い上げられていき  ――――  やがて、ルーファウスは、絶望の中で、絶頂を極めた。
「ああああっ………あっ……」
喉から迸った声を抑えることもできなかった。
「これ、イッてるぞ」
「ほんとだな……っ……すごい締めつけてやがる」
嗤われながら、めちゃくちゃに突き上げられ、快感を与えられるままに、埋め込まれた二本の屹立を締めつける。
やがて、男たちの身体が抜け出していき、だが、すぐに別の男たちに前後から抱かれ、押し入ってきた二本の怒張に、なすすべもなく貫かれた。
すでに意識は朦朧とし、自分が、どんな体位をとらされ、何をされているかもわからなかった。ただ、わかるのは、残酷な凌辱が、まだ終わっていない、ということだけだった。
何度も意識を失いかけ、そのたびに、頬を叩かれ、強引に引き戻される。
(このまま、死ぬのか)
朦朧とした頭の片隅で、ぼんやりと思った。
(……まあ、いい。どっちにしろ、もう、戻れない)
どこに、戻れないのか、それは、自分でも、よくわからなかった。
だが、その時、ふと、思い浮かんだ顔があった。
(ツォン……)
その名を心の中で呼ぶ。
だが、呼びなれたはずのその名が、今は、あまりにも遠かった。
(…ツォン……)
その遠さがせつなくて、思わず、声に出して呼ぼうと口を開く。
だが、そこに、また、怒張を突きこまれ、喉をふさがれた。
激しい痛みと苦しさと、そして、快感とに身体を震わせながら、もう一度、その慕わしい名前を心の中で呼ぶ。
呼べば、いつものように「はい」と返事が返ってくるような気がして。
もちろん、そんな奇跡は起こらない。
それでも、ルーファウスは心の中で、ただ、その名を呼び続けた。

□■□■□■□

「ツォン……っ……!」
何度も、その乾いた唇から、自分の名が呼ばれるのを聞きながら、ツォンは、ルーファウスの肩をそっと押さえた。
額は汗にまみれ、その端正な顔は苦しげに歪められている。
「社長。私です」
声をかけても、恐怖と絶望をその表情に浮かべたルーファウスの耳には届かない。
「……やめ………もう……っ…」
ツォンは、唇をかみしめた。
この状態になる時は、いつもこうだった。いやだ、と何度も繰り返し、涙を流し、自分の名を呼ぶ。
ルーファウスが、いま、どんな夢に苦しめられているのか、ツォンにはわかっていた。
「……ツォン……っ………」
「社長……私です。ツォンです」
「……ツォンっ…………」
「ここにいます」
ツォンは、そっと、激しく身もだえる身体を両手で抱きしめ、囁いた。
何度も何度も囁き、震える身体を抱きしめる。
「ツォンっ…!」
ルーファウスが高く叫び、ふと、その身体の動きがとまった。
見開かれた目が宙に向けられ、唇が震える。
だが、もう一度、社長、と呼びかけると、ゆっくりと、その目が瞬いた。
やがて、蒼い瞳が、ゆっくりと動き、ツォンを見る。
「……大丈夫ですか…」
ツォンは囁き、ルーファウスの汗にまみれた手を握った。
「ああ………」
ツォンの腕の中で、ようやく、ルーファウスの身体のこわばりがとけていく。
「……ツォン……か」
「はい」
そっと、その身体をシーツに横たえると、ルーファウスは、深い吐息をついた。
「………また……おまえを呼んだか?」
「……はい」
「そうか……」
ルーファウスは苦笑した。
「起こしたな。すまない」
「いえ」
ルーファウスは、ゆっくりと右手をあげ、額に手をあてた。
「また、嫌な夢を見たのだろうが……思い出せないな」
そして、ふと、自分の手の甲を確認する。
「星痕の発作でもないようだな」
「はい。それは大丈夫のようです」
「ならいい。水を」
「はい」
グラスを手渡し、ルーファウスの身体を支えて、抱き起こす。
水を喉に流し込み、ルーファウスは、小さく息をついた。
そして、頬に小さな苦い笑みを浮かべた。
「悪夢にうなされるなど、子供でもあるまいしな」
ツォンは、首を振った。
「お疲れなんですよ。まだ、夜中です。お休みください」
空になったグラスを受け取り、囁く。
「ああ……そうだな」
素直に呟き、ルーファウスは、ベッドの中に潜り込む。
おそらく、半分しか目覚めていない状態なのだろう。ほどなくして、すーと寝息を立てて、寝入ったルーファウスを見て、ツォンは深いため息をついた。
カイルゲイトの地下室で行われた凄惨な凌辱。
あれから、もう一年が過ぎようとしている。
だが、ルーファウスの心と体には、あの残酷な記憶が、深く刻み込まれたままだ。
それは当然だろう。だが、誇り高いこの人は、自分があのような出来事に心を捕らわれていることすら、自分に許さない。あの出来事を、いまだに、夢で見ているなどということは、許せないことなのだ。
ゆえに、おそらく、心が記憶に蓋をしているのだろう。こうして、夢となって蘇った凌辱の記憶にうなされ、目を覚ましても、決して、その夢を覚えていることはない。
かつて、セフィロスがニブルヘイム魔晄炉に落ち、死んだと報告された時を思い出す。
あの時も、ルーファウスは、その事実を記憶から締めだした。締めだすことで、正気を保った。
あの時と同じだ、とツォンは苦く思う。
そのように、記憶に蓋をするようなやり方は、決していいことではない、と思う。
その証拠に、一年たった今でも、あの記憶は、夢となってルーファウスをいまだに苦しめている。
だが、そうはいっても、ルーファウスに、そのことを突きつけることもできない。
星痕症候群という病と闘っているルーファウスに、そんな残酷なことは、ツォンにはできなかった。
ルーファウスは、本来、強い人間だ。
だからこそ、いつ死ぬかわからぬ恐ろしい病を前に、一歩も引かず、戦うことができる。
だが、強いからこそ、こうして陥る罠も、また、あるのだ。
ツォンは、静かに眠るルーファウスの額に、そっと唇を寄せた。
せめて、今日はもう、夢に苦しめられることもなく、星痕の発作に苦しめられることもなく、朝まで、ゆっくり眠って欲しいと、心から願った。

END

2011年6月11日 up

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