つかの間の夢 8

粘膜のこすれる湿った音と二人分の荒い息遣いが寝室に響く。
こらえきれず漏れる、せつなさを帯びた喘ぎ声が自分のものだ、という事実には、いまだに慣れることができない。
だが、硬く熱い楔に、身体を内側から押し開かれ、内壁をこすりあげられ、前立腺を抉られると、慣らされたルーファウスの身体は、そのすべてを快感として受け止め、貪欲に貪るようにすらなっていた。
後ろから腰を持ち上げられ、引き寄せられ、ぐぐっと怒張が奥まで突き込まれる。
奥の奥まで身体を開かれ、ルーファウスは背をそらし、快感に全身を震わせた。
熱い身体が打ちつけられ、たくましいものに、容赦なく身体の奥を抉られる。
「あ……あっ……あああっ……っ」
あっという間に絶頂に追い上げられ、ルーファウスは息を詰まらせ、全身を快楽の中で張りつめさせた。
すっかり身体が覚えてしまった、射精を伴わない絶頂は、深く長く続き、さらなる快感を呼び起す。
まだ硬く熱い楔に、しびれたように甘く疼くそこを、激しく突き上げられ、ルーファウスはあまりの快感に目じりから涙をあふれさせた。
快楽の中で翻弄されながらも、ルーファウスはぎりぎりのところで、己を見失うまいと必死で踏みとどまっていた。
とはいえ、セフィロスに抱かれると、いつも最後には、理性もプライドも、なにもかもを投げ捨てさせられ、あさましく快楽を貪り、むせび泣く羽目に陥らされる。
常に己を律し、我を失うことなど恥と思い、生きてきたルーファウスにとって、自分がそんな醜態をさらすのは、屈辱以外のなにものでもなく、耐えがたいことだった。ましてや、他人にその姿を見られるなど、許せるものではなかった。
だが、それならなぜ、セフィロスとの逢瀬を続けているのか。
初めは、セフィロスを自分の味方に引き入れようと思っていた。
父親との確執の中で、父親の命綱ともいえるセフィロスを、自分の陣営に引き入れる。それは、考えただけでぞくぞくするような、暗い愉悦を伴っていた。
だが、今は、どうなのだろう。
セフィロスを味方に引き入れることができた、とまでは思わない。
身体の関係があったところで、それは、男同士のことで、なにか結婚のような契約があるわけでもなく、愛だの恋だの、という感情がそれを結び付けているわけでもなかった。
とはいえ、セフィロスから非番のたびに、連絡が入ることを考えれば、ルーファウスに対して、何らかの好意は抱いているのだろう。
たとえ、それが、単に身体がいい、ということだとしても、好意には違いない、と皮肉めいた気分で思う。
とすれば、とりあえず、当初の目的は果たしたことにはなるのだろう。
父親は、ルーファウスがどこかの女と逢瀬を繰り返している、という見当違いな結論に達していたが、いずれにしろ、父親に怪しまれていることに変わりはない。
そしてまた、あの父親が、ルーファウスの相手を突きとめるのを、あきらめるとも思えない。
つまり、ますます、セフィロスとの情事は、危険な綱わたりになってきたということだった。
そうであってみれば、理性的に考えれば、つながりが切れない程度に、セフィロスとの逢瀬を続けるのが得策なはずだ。
だが、今日、誘いをかけたのは、ルーファウスだった。
セフィロスは非番ではなかったが、ミッドガルのソルジャー本部で幹部会議に出席することになっていた。
それを知ったとたん、ルーファウスは、セフィロスの携帯を鳴らしていた。
なぜ、そんなことをしたのか、今でも、わからない。
だが、息子がセフィロスと寝ているなどとは、思いもよらないらしい父親の鼻を明かした気になるのは、事実で、そんなくだらない反抗心のせいなのかもしれなかった。
(我ながら、くだらないにも程がある)
心の中で自嘲する。
(知ったら、怒り狂うのだろうな)
だが、そこで、ふと思う。
相手がセフィロスであれば激怒するのであって、息子が男と寝ている、という事実そのものには、あの父親は、なにも思わないのではないだろうか、と思う。
(「ご婦人方とうまく付き合え。何人と寝ようとかまわん」)
父親がそう言ったのは、昨日のことだ。
たとえ、ルーファウスが男に抱かれていると知ったところで、それなら、ご婦人だけではなく、取引先の重役たちとも寝ろ、くらい言いそうだった。
別に、だからといって、今さら、どうとも思わない。
そういう父親だと知っているし、そしてまた、心のどこかで、父親の言うこともある意味正しいのだ、と思っている自分がいるのだ。
父親は、若い女には手を出すな、などと言っていたが、そんなことは、ルーファウスとて重々承知していた。
社交界にも、ルーファウスと同年齢くらいの若い少女たちは、当然いる。
その少女たちにとって、ルーファウスは、純粋な意味でも、そして、将来の神羅社長夫人、という現実的な意味でも、あこがれの的で、そんなことは、ルーファウス自身もわかっていた。
みな、それぞれ可愛らしく、美しい少女ばかりである。
ルーファウスとて、若い男だ。その少女たちを見れば、好意も抱くし、欲望も感じる。
だが、たとえそうだとしても、その少女たちと、ある一定の距離以上近付くことは、自分には、許されないことだとわかっていた。
関係を持つなどというのは問題外だとしても、たとえ、プラトニックな意味であっても、そこに恋、のようなものが芽生えてしまっては、その先にあるのは、不幸な結末でしかないことが、はっきりしているからだ。
自分の結婚相手を父親が選ぶのは、わかりきっている。
そうであれば、将来の約束もできない相手と恋を語ったところで、それは相手を不幸にするだけだったし、かといって、今が楽しければ、というような刹那的な感情におぼれるには、ルーファウスは理性的すぎたし、ある意味で誠実だった。
だから、父親の見当違いな想像は、まったくありえないことだったし、そして、また、夫人達とうまく付き合っていくことが大事だということも、父親に言われるまでもなくわかっていたのだった。
そう、わかっては、いる。
だから、あの時、嘔吐したのは、そのせいではない。
そうではなく、がんじがらめに鎖につながれたような、圧迫感ゆえだった。
自分の前には、何本も道が引かれている。
そのどこを通っても、その先には父親の手があり、逃れようと、横道にそれても、結局、そこにも父親の手が待ち構えている。
そんな救いようのない閉塞感は、自分の感情すら、あらかじめ父親に用意されているかのような息苦しささえ感じさせる。
自分の身体も、感情も、すべてが己のものではなく、ただ、操られるためにあるかのような、恐ろしいほどの虚無感。
それは、時折、ルーファウスをおそい、そんな時は、息をすることすらおぼつかなくなるのだ。

ふと、身体から、熱い塊を引き抜かれ、ルーファウスは、吐息をもらした。
腰をつかまれ、仰向けに身体を返される。
両足を大きく開かれ、腰を引き寄せられ、いきり立った熱いものが再びおしこまれた。
慣らされたとはいっても、ルーファウスにとって、セフィロスの身体を受け入れるのは、今でも、やはりきついことに変わりはない。
今まで広げられていたとはいえ、いったん閉じたそこに、すっかり勃ちあがった凶器のようなそれを突きこまれるのはやはり苦しく、ルーファウスは眉を寄せ、喉の奥で呻いた。
だが、さすがにもう痛みはなく、ルーファウスの身体は、押し込まれるままに、セフィロスのたくましいものを根元まで受け入れた。
腰をゆすり上げられ、両足をセフィロスの肩にかけられる。
不意に、セフィロスを受け入れ、思い切り広げられた入口を、冷たい指先でたどられ、思わず目を見開いた。
指は、なにかを確かめるようにゆっくりと動き、ルーファウスは身体を震わせた。
だが、ふと指の動きが止まり、ぐい、とその指先に力が込められた。
限界まで広げられたそこを、さらに広げられる感触。
セフィロスの意図を悟り、ルーファウスは、蒼白になった。
「……やめ……っ………むり……だっ……」
「力を抜け」
セフィロスが囁き、さらに圧迫感が増す。
「………きつ……っ…」
「抵抗するな。怪我するぞ」
ルーファウスは、必死で身体から力を抜こうとした。
だが、恐怖が先にたち、身体はこわばる一方だ。
ふと、セフィロスの大きな手が、ルーファウスのものにからみついた。
それは、恐怖にすっかり萎えてしまっていたが、しばらく愛撫されるうちに、ゆっくりと勃ちあがる気配をみせて行く。
「力を抜け」
深い声に耳元で囁かれ、首筋に唇を落とされ、中心を愛撫され、こわばりがとれていく。
「そうだ」
セフィロスの怒張でいっぱいになっているそこが、収縮と弛緩を繰り返す。
その瞬間、ぐい、と指が中に押し込まれた。
「ううっ……」
強烈な圧迫感に、反射的に身体が閉じる。
「身体を開け。まだ、指先しか入ってない」
ルーファウスは、浅く息を吐き、必死で身体を開いた。
長い指が、肉をかき分けるようにして、入ってくるのを感じる。
そして、ゆっくりと引き抜かれていく感触。
だが、もう一本の指先が、またそこに宛がわれ、ルーファウスは、唇を震わせた。
途中まで引き抜かれた指が、また、中に突き込まれる。
それと同時に、もう一本の指が、入口を押し開き、二本一緒に、ルーファウスの身体の中に押し込まれた。
「あ……あ……ああ……」
硬く熱いものと、2本の指に押し広げられ、喘ぐ。
そして、指が揃えて曲げられ、前立腺をぐいと押し上げた。
「あああああああっ」
一気に絶頂に押し上げられ、ルーファウスは叫んだ。
震える身体を、セフィロスのものが、突き上げる。
奥まで蹂躙されながら、指で、そこを抉られ、ルーファウスは悲鳴をあげた。
すさまじい快感だった。
頭が真っ白になり、なにも考えられなくなる。
「……やめっ……お……おかしく……なる……っ……」
「なればいい」
囁かれ、突き上げられる。
「だ………だめっ……だ……待っ……」
「なにも考えるな」
(ああ……そうか)
わずかに残った、冷静な部分が考える。
(これが欲しいのか)
この、なにも考えられない程の快感の中で、自分はすべてを忘れたいのかもしれない。
自分をからめとり、がんじがらめにつなぎとめる、重い鎖の存在を、忘れたいのかもしれない。
生まれおちた瞬間から、自分に課せられた鎖。
ルーファウス神羅であること。
それは、時として、耐えがたいほどの重さと孤独感をもって、ルーファウスに襲いかかるのだ。
(だが、これは、逃げ、だ)
快楽の中に逃げ込み、すべてを忘れようなど、自分に許していいはずがない。
だが、そうとわかっていても、全てを何かにゆだねてしまいたくなる自分がいる。
「なにも考えるな」
耳に吹き込まれる、深い声。
それに、全てを預けてしまいたくなる自分がいる。
(今だけ……いいだろうか。少しだけ……)
たくましく硬いものに身体を貫かれ、身体の奥を突き上げられる。
同時に、骨ばった指に、そこを抉られ続け、何度も絶頂に向かって追い上げられる。
「あああっ……もう……っ…………ああ……っ」
あまりの快楽に、理性を吹き飛ばされる。
なにもかもを忘れ、ただ、そこにあるのは、快感と自分を犯す熱だけだ。
「あ…っ……んっ……また…っ」
ルーファウスは、身体を激しく震わせ、もう何度目かもわからぬ頂を上りつめた。
気が遠くなる。
それが限界だった。
堕ちる感覚にあえぎながら、ルーファウスの意識は、そのまま闇に飲み込まれていった。

ふと、頬に冷たいものを感じ、ルーファウスは目を開いた。
すぐ近くに、怜悧なセフィロスの顔があり、目を瞬く。
「気がついたか」
「……ああ……」
ルーファウスはつぶやき、手をあげようとした。
だが、まったく動かない。
もう片方の手も、ぴくりと指先が動いたものの、持ち上げることはできず、眉をひそめた。
「大丈夫か」
「……身体が……動かない」
セフィロスは、小さく笑った。
「そうだろうな。飲むか?」
そう言って、手に持ったグラスを見せる。
ルーファウスがうなずくと、セフィロスの力強い腕が回され、身体を抱き起こされた。
自分で座ろうにも、身体に力が入らず、バランスを崩しかけたところを、支えられる。
「いいから、寄りかかれ」
口元にグラスをあてられ、水を流し込まれる。
冷たい水に、ようやく、頭が少しはっきりした。
ふたたび、身体をシーツの上に横たえられ、ブランケットを引き上げられる。
「……何時だ」
「まだ12時だ」
思ったより、気を失っていた時間は短いらしかった。
「明日は?」
「……オフだな」
「それなら、ここで寝ていけ」
セフィロスはそう言うと、ルーファウスの隣に身体を横たえた。
そして、肘で頭を支えるようにして、ルーファウスの顔を覗き込んだ。
「なにがあった?」
ルーファウスは驚いて、目を瞬いた。
「え?」
「なにかあっただろう」
思わず、口をあけたまま、セフィロスの顔を見つめる。
「なんだ、その顔は。おれが、そんなこともわからないと思ったか」
「いや……」
「あんな顔をしていれば、すぐにわかる」
ルーファウスは、思わず、苦い笑いを浮かべ、吐息をついた。
「ポーカーフェイスには自信があったんだが」
セフィロスは、鼻で笑った。
「それで?……なにがあった」
ルーファウスは首を振った。
「別に。大したことじゃない」
「父親となにかあったのか」
ルーファウスは、また驚き、目を瞬いた。
「……まいったな」
セフィロスはくっと笑った。
「おまえが表情を変えるのは、父親に関することだけだからな。なにかあったというなら、相手は父親だ」
ルーファウスは、苦笑した。
セフィロスは、ふと遠くを見るように、視線を彷徨わせた。
「父親か…………」
呟くように言う。
「おれは父親がいないからな。どういうものかよくわからんが」
「……いない?」
「ああ。死んだのか、それとも………」
そこで、少し唇をゆがめる。
「もともと、どこの誰かもわからなかったか……わからん」
「母親は?」
「死んだらしい」
「らしい?」
「おれは、施設で育ったからな。母親の顔も知らん。名前だけは知っているがな」
「そうか………なぜソルジャーに?」
「おれのいた施設に、定期的に神羅の関係者がきていてな。何人かピックアップしては検査をしていく。それで12才で適性検査を受けて、ソルジャー養成所に入った。おそらく、どこの施設でもやっていたんだろう。幼いうちから検査をして、ソルジャーの適正を持つ子供を探していたんだろうな」
「なるほど」
「別になりたくてなったわけでもないが……他にできることもなかったしな。食うものがもらえて寝るところも用意してもらえて、金ももらえるなら、文句はなかった」
セフィロスは小さく笑った。
そして、ルーファウスを見下ろす。
「お前の母親は?」
「一歳の時に死んだ………当然、なにも覚えていない。写真はあるが、母親だと言われても、そうか、と思うだけだな」
「それから、ずっとあの父親と二人か?」
「そうだな。まあ、使用人はいたが」
セフィロスは、ルーファウスの額にたれかかった金髪をそっとかきあげた。
「おれは、ずっと、なぜ、こんなにおまえが気にかかるのかと思っていた」
ルーファウスは、思わず、セフィロスを見つめた。
「たぶん………おれとおまえは似ている」
ルーファウスは目を瞬いた。
「わからないか?」
セフィロスは、ルーファウスを抱き込むように、腕をまわした。
「おまえもおれも、一人だ」
セフィロスは、小さく笑った。
「まあ、おまえには父親はいるが………どうやら、いたところで、大した違いはなさそうだしな」
ルーファウスは、思わず笑った。
「そうだな……いない方がましだ」
そこで、ふと、口を閉じる。
そして、呟くように続けた。
「父がいれば………わたしは永遠に鳥かごから出られない」
「鳥かご?」
「ああ。だから………力が欲しい。この鳥かごから出るための力が欲しい」
セフィロスは、しばらく何かを考えるようにルーファウスを見つめた。
そして、ふと笑った。
「おれが出してやろうか?……二人でどこかへ行くか?」
ルーファウスは、目を見開いた。
「コスタか……アイシクルでもいいな。おれが守ってやるぞ」
「それは、楽しそうだ」
「ああ、楽しいぞ。おまえが望むなら、やってやる。どうだ」
ルーファウスは、首を振った。
「楽しそうだが、それでは、鳥かごから逃げたことにしかならない。私は逃げるのは嫌いだ」
「ふむ……では、どうするんだ」
ルーファウスは、ふと、口をつぐんだ。
セフィロスは、その顎を指で捉えた。
「言え。もう、なにか考えているな」
ルーファウスは、小さく笑った。
「親父と勝負する」
「勝負?」
「ああ」
「なんの勝負だ」
「生きるか死ぬかの勝負だ。勝てば自由、負ければ、死ぬ」
セフィロスは、眉を寄せた。
「……なにをするつもりだ?」
ルーファウスは、セフィロスを見つめ、小さく笑った。
「神羅を乗っ取る」
セフィロスの顔に、あっけにとられたような表情が浮かぶ。
おそらく、予想もしなかった答えだったのだろう。
「このままでは、社長になろうとなるまいと、結局は、親父の引いたレールの上を歩くだけだ。そんなのは、もううんざりだ。だから、今、奪い取る」
セフィロスは、なおも、ルーファウスを見つめていたが、不意に、くっと肩を震わせた。
「これは傑作だ。副社長が、自分の会社を乗っ取るのか」
「ああ。笑えるだろう?そのかわり、失敗すれば………命はないだろうな。親父は逆らった私を生かしてはおかない」
ルーファウスは、小さな笑みを浮かべた。
セフィロスは、何を思うのか、ルーファウスを見つめた。
そして、指で顎を掴み、ルーファウスの顔をのぞきこんだ。
「おれの力は必要か?」
囁くような声に、ルーファウスは、驚いて目を瞬いた。
「おれが欲しいか?」
ルーファウスは、すぐ近くにある、蒼く輝く瞳を見つめた。
「なぜ……そんなことを?」
「おまえが死ぬのは困る」
「困るのか」
ルーファウスはおもしろそうに笑った。
「ああ、困る。どうやらおれは、自分で思っている以上に、おまえが気に入っているらしいからな」
セフィロスは、もう一度、ルーファウスの目をのぞきこんだ。
「どうなんだ。おれが欲しいか」
ルーファウスは、唇を湿した。
「欲しい」
考えもせず、答えは口から出ていた。
セフィロスの顔に緩やかに笑みが浮かんだ。
「いいだろう……おれをおまえにやる」
武器を握る左手を、ルーファウスの目の前に掲げた。
「この手を、おまえにやる」
「ああ……いいな。これは私のものか」
ルーファウスは、セフィロスの、骨ばって大きな、あの長大な刀を軽々と扱う手をじっと見つめた。
「そうだ。おまえの望むことをしてやる。勝負など面倒なことをしなくても、おまえの親父を殺すなど、わけないことだぞ」
ルーファウスはくっくっと笑った。
「そんな、簡単に行くか。犯罪者になったら、逃げるしかない。それでは、親父がいなくなっても私の負けだ。自分の手は汚さない。親父のやり方を真似してやる」
「それなら……必要になったら言え。いつでも、おまえのところに行ってやる」
ルーファウスは、唇をほころばせ、晴れ晴れと笑った。
「二人で神羅を乗っ取るか」
「いいだろう。付き合ってやる」
セフィロスもまた笑う。
そして、どちらからともなく、唇が重なった。

2011年5月11日 Up

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