Captive 1

乾いた音が、室内に響いた。
殴られたのだ、と思う間もなく、再び、殴られる。
両肩を掴まれ、ベッドに押し付けられ、首と胸に走った痛みに、ルーファウスは呻いた。
「社長。強情を張らない方が身のためだと言ったはずだ」
カイルゲイトが囁くように言った。
そして、再び、頬を殴られる。
その目を見て、ルーファウスは、ぞっと身を震わせた。
明らかな愉悦と、残酷な欲望が、その目の奥にはちらついていた。

カームの家から拉致され、ここに連れてこられて、おそらく一週間ほどが過ぎていた。
ルーファウスが監禁されている部屋は、窓が一つもなく、今が、朝なのか夜なのかも、わからない。
だが、食事は、きちんと、家政婦らしい女が運んできており、その回数から、おそらく、ここに来て、一週間程度が過ぎただろうと、と踏んでいた。
その間、カイルゲイトがやってきたのは、3回だった。
どうやら、ミッドガル再建の活動をしているらしく、それなりに忙しいようだった。
カイルゲイトは、ここを訪れるたびに、ミッドガルの再興計画や、神羅の備蓄倉庫の場所、パスワードなどを聞き出そうとしたが、威圧的ではあったものの、あくまでも、丁寧な態度は崩さなかった。
だが、この部屋の気味の悪い内装と、自分の足につけられた足枷を見れば、この部屋がどんな用途に使われてきたのかは一目瞭然で、そんな部屋を持つカイルゲイトのその態度がうわべだけのものであることは、最初からわかっていた。いつ、本性を出してくるか、と、ルーファウスは冷静にカイルゲイトを観察していたのだった。
そして、いま、ルーファウスを殴るカイルゲイトの目には、その本性が剥き出しにされていた。
カイルゲイトは、殴ること、そのものを楽しんでいた。それは、殴るたびに、その目に浮かぶ、喜悦の色を見れば明らかだ。
この男は、サディストだ。
それも、真性の、異常性を持ったサディストであることは確実だった。
なぜ、急に本性を出したのか。
おそらく、そろそろ、復興計画が行き詰ってきたか、あるいは、なにか問題が起きたか、その辺りが原因だろうとルーファウスは思った。こういうタイプは、うまくいっている間は、鷹揚にもなれれば理性的でもいられるが、うまくいかなくなったとたん、その本性を剥き出しにする。そして、カイルゲイトの場合、その本性とは、冷酷で残酷なサディストだ。その矛先が、向く先は………考えるまでもなかった。
(もう少し……猶予があるかと思っていたが)
頭の中で冷静に計算をめぐらせながら、ルーファウスは、唇を湿した。
「強情を張っているわけではない。私でも知らないことは多い。カンパニーの全てを頭に入れているわけではないんだ。部下に会わせてくれ。そうすれば、そちらの要求にも答えられるだろう」
カイルゲイトは黙っている。
ルーファウスは、重ねて言った。
「ミッドガルの復興が目的なのだろう?ならば、目的は同じだ。ここから出してくれれば、私の力を貸すことができる」
カイルゲイトは、冷たく笑った。
「あんたをここから出したら、まずやることは、俺を手下どもに殺させることだろうさ」
「なぜ、そんなことを思う?私には、そんなつもりはない。どちらにしろ、私が表舞台に立つことは、もうできないんだ。父と私は、いまや、この災厄の全ての原因にされているらしいからな。表にたってリーダーをつとめてくれる者がいるなら、私としてもありがたいんだ。それが、もともと、神羅の軍人だというのなら、わたしとしても安心だ。どうだろう、私達はうまくやっていけると思うのだが」
カイルゲイトは、しばらく考えるようにルーファウスを見つめていたが、やがて、唇を歪めた。
「やっぱりあんたは口がうまいな。もう少しで、あんたの口車に乗せられるところだ。だがな、別に、俺はあんたなど必要ないんだ。神羅の全ての情報を、あんたから引き出せれば、それでいい」
「先ほどから言っているように、わからないこともある。部下と連絡をとらせてくれれば、もっと情報を渡せるが」
カイルゲイトは、冷たく笑った。
「その部下とやらが知っているなら、そいつを捕まえて吐かせれば済むことだな。あんたはもう用済みってことになるが、それでもいいのか?」
そう言うと、カイルゲイトは服の内側から、拳銃を取り出した。
銃口をルーファウスの額に押し付ける。
ルーファウスは、小さく首を振った。
「私の生体認証がでしか解除できないシステムがかなりある。それは、得策ではないと思うが」
カイルゲイトは、にやりと笑った。
「あんたの指紋も、手のひらの皮も、網膜も、剥がしておくさ」
(サディストめ……)
ルーファウスは心の中で毒づいた。
だが、眉一筋も動かさず、カイルゲイトを見つめる。
「……ほう、気が強いな、社長。だがな、皮を剥がされる時、人間がどんな声を出すか知ってるか?そりゃあ、すごい声を出すぞ。さぞ、痛いんだろうな」
カイルゲイトは、優しげにすら見える微笑みを浮かべて、ルーファウスの顔を覗き込んだ。
「取り澄ましたあんたが泣きわめく姿を見るのは、楽しいだろうな。助けてくれ、やめてくれ、って俺に懇願するんだ。なんでもします、ってな。想像しただけで、イケそうだ」
囁くように言うと、指を伸ばし、ルーファウスの顎を掴んだ。
「まあ、今すぐ、そんなことはしないさ。皮を剥がしたら、このきれいな顔も身体も台無しだ」
カイルゲイトの指が、ゆっくりと唇に触れる。
その指が、明らかに性的な意味を込めて触れてきたことに気づき、ルーファウスは、心の中で舌打ちをした。
カイルゲイトは、嫌な笑みを浮かべると、ルーファウスの左手を掴み、ベッドサイドに置いてある小さな棚の引き出しを開いた。
そこから取り出した手錠を、ルーファウスに見せつけるようにしながら、その左手にかける。そして、片方の輪を、ベッドの頭側の金属の枠にはめた。
右手も掴まれ、ルーファウスは思わず抵抗した。
その瞬間、折れた肋骨の辺りを、ぐいと押され、ルーファウスは呻いた。
「社長。おとなしくしてろよ。あんた、肋骨折れてるんだろう?一応、手加減してやるが、抵抗したら、手加減もなしにやるからな」
カイルゲイトはせせら笑うように言うと、ルーファウスの右手も、左手と同じように、手錠をはめ、ベットの枠に固定した。
両手を上げる形でベッドに縛り付けられ、ルーファウスは嫌悪に顔を歪めた。
「かわいそうにな。あんたは犯されるんだ。それも、下っ端の軍人にな」
カイルゲイトが、楽しそうに言う。
「社長。この部屋にカメラがあるのは気がついたか?」
もちろん、ルーファウスは気がついていた。
入口付近と天井、そしてベットの頭側の壁の3か所にカメラが備え付けてあることを、この部屋に繋がれた時に確認してあった。
「あんたが俺に犯されているところを撮ってやる」
監視にしては厳重なことだ、と思っていたが、なるほど、そういう目的か、と吐き捨てるように思う。
「あんたのレイプもののAVを作ってやるよ。あんた、見た目はいいからな。いい絵が撮れるぞ。いい顔で啼けよ」」
そして、ズボンの前を開き、自分のモノを取り出すと、ルーファウスの口元に突きつけた。
「舐めろよ、社長」
それは、すでに硬く勃ちあがり、欲望に脈打っていた。
ルーファウスは、思わず顔をそむけた。
その顎をつかまれ、引き戻される。
「口を開けろ。舐めて、濡らせ。濡らさないと、あんたがきついだけだぞ」
ルーファウスは唇を噛みしめ、カイルゲイトを睨みつけた。
カイルゲイトがにやりと笑う。
「社長、やっぱり、あんたいいな。俺の好みだ。あんたみたいな男を痛めつけるのが、何よりも楽しい」
そう言うと、また、ルーファウスの胸に手の平を押し当てた。
片頬だけに残酷な笑みを浮かべる。
ルーファウスを見つめながら、ぐいと、胸を押した。
激痛が走り、ルーファウスは呻いて、痛みにのけぞった。
その瞬間、わずかに開いた唇の中に、太い指を突っ込まれ、口をこじ開けられる。大きく開かれた口に、カイルゲイトの怒張が押し込まれ、ルーファウスは目を見開いた。
「…ぐっ……!」
太いモノが奥まで押し込まれ、顎の骨が外れそうな痛みと、息もできない苦しさに、喉が鳴る。
なんとか逃れようと、両手で自分を戒める手錠にしがみつき、ずりあがろうとする。
だが、その顔を、カイルゲイトに押さえられ、上から、喉の奥まで怒張を押し込まれた。
「うっ………っ…」
両頬を挟むように押さえられ、顔を動かすこともできない。
カイルゲイトは、腰を上下に揺すり、ルーファウスの口の中を、怒張で何度も突き上げた。
喉の奥まで、蹂躙され、苦しさに、涙があふれ出る。
「いい顔だ」
カイルゲイトが嗤い、ぐぐっと、さらに奥まで己を突きいれた。
「っっ……!」
奥の粘膜を、硬いものでこすられ、ルーファウスはえずいた。
「苦しいか」
カイルゲイトが、楽しそうに囁いた。
気が遠くなりかけた瞬間、押し込まれたモノが少しだけ抜き出され、ルーファウスは、激しく咳き込んだ。
空気を求めて、喘ぐ。
「社長、舐めろ。舌を使え。ちゃんとやれば、奥までは入れないでやるぞ」
冗談ではない。
そう言おうにも、まだ、カイルゲイトのモノは、口いっぱいに押し込まれたままで、声を出すこともできない。
だが、ルーファウスの目で、その言いたいことは伝わったようだった。
カイルゲイトは、嗤った。
「あんたいいな、最高だ」
もう一度、ぐいと喉の奥まで、カイルゲイトのモノが押し込まれる。
「っ……っ…うっ………っ」
喉の奥を何度も突かれ、息ができず、苦しさに、身体が痙攣する。
死ぬ、と思った瞬間、カイルゲイトのモノが抜き出され、ルーファウスは、胸を波打たせ、必死で息を吸い込んだ。
苦しさと、胸の痛みで、頭が朦朧とする。
カイルゲイトに、服をはぎとられ、下半身を剥き出しにされるのがわかったが、抵抗することもできなかった。
両足を大きく広げて抱えあげられ、おぞましくいきり立ったものを押し付けられる。
「社長。やるぞ」
カイルゲイトが囁き、ぐいと、己を、ルーファウスの身体に突き立てた。
「……っ……!」
激痛に、一瞬気が遠くなる。
だが、そのまま、ぐいぐいと突き込まれ、ルーファウスは、目を見開き、身体を硬直させた。
痛みのあまり、息もできない。
震える唇を噛みしめ、喉の奥で呻き、必死で、耐えるよすがに、自分の手を戒める手錠を握りしめた。
カイルゲイトは容赦なかった。
ルーファウスの腰を掴み、奥へ奥へと腰を突きいれてくる。
その、引き裂かれるような痛みに、ルーファウスは声も出せず、再び、涙をあふれさせた。
これは、正直、誤算だった。
実は、ルーファウスは、この行為を甘く見ていたのである。
この部屋を見たときから、いつかは、こうなるのではないかと予想はしていた。
頼みの綱は、カイルゲイトが男に興味がないことだったが、ルーファウスを見る目に時折りちらつく残酷な欲望を見てとり、それも望み薄だ、と思っていたのである。
だが、たとえ犯されることになったとしても、殺されさえしなければ、大したことではない、とルーファウスは思っていた。
もちろん、不快なことには違いない。
だが、初めてやられるわけではないし、それどころか、自分の身体は、男に抱かれることに慣れているはずだ。たぶん、そう大したダメージもなく、乗り切れるだろう、と思っていたのだった。
もちろん、こんな監禁用の部屋を持っているような男だ。普通のセックスではないかもしれない。
たとえ、そうだとしても、結局、やることは同じだ、とルーファウスは思っていたのだった。
だが、カイルゲイトのモノを押し込まれた瞬間、自分のその考えが甘かったことを、ルーファウスは思い知っていた。
この痛みは、想像を絶するものだった。
セフィロスに初めて抱かれた時のことを思い出す。
だが、あの時も、いきなりではなかった。きちんとほぐされ、開かれてはいたのだ。
男を受け入れるなど初めての経験だったルーファウスにとっては、それは恐ろしいほどの激痛を伴う行為ではあったが、セフィロスが、手加減もなしにルーファウスを抱いたわけがなく、その証拠に、わずかな痛みはしばらく残ったものの、酷く傷つけられたわけでは、まったくなかった。
だが、これはちがう。
カイルゲイトは、明らかに、故意にルーファウスを痛めつけることに、愉悦を感じていた。
残酷なやり方をされた時、この行為がどれほどの痛みを伴うものなのかということを、ルーファウスは初めて思い知っていた。
それに、経験があるとはいえ、この5年ほど、ルーファウスは、誰とも寝ていない。
しばらく使わない間に、すっかり閉じてしまったそこを、ほぐされもせず、暴力的にこじあけられているのだ。
それが、こんなにきついものだとは、正直、思ってもみなかったのだった。
「痛いか」
カイルゲイトが、楽しそうに囁く。
そして、さらにぐい、と、己を突きいれた。
ルーファウスは声も出せず、唇を震わせた。
まるで拷問だった。
「社長。これは、大変だ。あんたのここ、切れたな。血まみれだ」
カイルゲイトが、からかうように言う。
「力を抜かないと、もっと大変なことになるぜ。まあ、もう手遅れかもしれないがな」
そういうと、カイルゲイトは、ルーファウスの身体を引き寄せ、力任せに突き上げ、自分のモノを根元まで押し込んだ。
「……っっ!…」
喉の奥でうめき、背をのけぞらせる。
だが、休む間も与えられなかった。
そのまま、ガツガツと突き上げられ、そのたびに、そこから頭まで、錐で刺し貫かれるような激痛が走る。
何も考えられなかった。
ただひたすら、歯を食いしばり、呻き、涙を流し、突きあげられるままに、身体を揺らすことしかできない。
痛みに気が遠くなる。
そして、永遠に続くかと思うような苦痛の中で、身体の奥深くで、男の欲望が弾けるのを感じながら、ルーファウスはとうとう、意識を飛ばした。

2011年6月2日 up

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