つかの間の夢 5

そのあと、しばらく、セフィロスからの連絡はなかった。
ウータイの戦闘が、ゲリラ戦の様相を帯びてきており、神羅軍が苦戦しているという情報もあった。
そして、また、ルーファウス自身も、会社と大学を往復する慌ただしい日常の中で、セフィロスとのことは、次第に頭の片隅に追いやられていった。
もっとも、ネットニュースで、セフィロスの姿を見るたびに、深い声や、蒼い瞳、そして、力強く自分を抱きしめた腕を思い出した。
それだけではなかった。
身体の奥深くに受け入れた、セフィロスの怒張の感触をも、まざまざと思い出し、ルーファウスは頬を火照らせた。
痛くて苦しくて、快感など、かけらもなかったはずだった。
それなのに、自分を貫いた楔を思い出すと、なぜか、身体の奥深くが疼いた。
疼くだけではない。そのまま、それは、馴染みの、下腹部が重くなるような感覚を呼び起こし、何度も、勃ちあがりかけた自分の身体を、ルーファウスは信じられぬ思いで見つめたのだった。
とはいえ、それも、日が経つにつれ、次第におさまっていった。
なにしろ、やらねばならぬこと、考えねばならぬことが山積みで、いかに強烈な経験だったとはいえ、一つのことにずっとかかずらう暇はなかったのである。
そして、あの一夜から、一ヶ月ほどがたった日。
副社長室で、会議用に資料に目を通していたルーファウスは、ふと、プライベート用の携帯の着信に気づいた。
何気なくディスプレイを見れば、もう忘れることはない12桁の数字が表示されていた。
あわてて、通話ボタンを押す。
そして、おそらく監視しているだろうタークスに、口の動きを見られぬよう、窓際に移動した。
『ルーファウスか』
前置きもなにもなく、相手は言った。
深く冷たい声に、心臓が跳ねた。
「ああ。戻ったのか?」
『二日だけ休暇だ。そのあとはまたウータイに戻る。来れるか?』
「いまは無理だが、午後は大学に行くことになっている。抜け出して行く」
『明日の予定は?』
「明日は、朝から出社。昼に取引先の社長と会食だな」
『明日の予定もあけられないか?』
淡々と言われた要求に、思わず、その裏にある意味を考え、ルーファウスは、頬が熱くなるのを感じた。
今までも、情事の相手に似たようなことを言われたことは何度もあった。
もう少し一緒に、朝まで一緒に……そして、そのたびに、うっとおしさしか感じなかったものだった。
だが、 気がつけば、「なんとかする」と答えていた。
『待っている』
余計なことはいっさい言わず、プツリと通話が切られる。
ルーファウスは、携帯を閉じながら、苦笑した。
我ながら、自分の反応にあきれる。
(これでは、恋をしている女のようではないか)
だが、そこでふと、眉を寄せた。
自分とセフィロスの間にあるのは、恋ではない。
だが、ではなんなのだろう。
自分は、セフィロスの力が欲しい。だから、セフィロスを味方につけたい。
では、セフィロスは?
セフィロスは、なぜ、自分を呼び出すのか。
たった二日の休暇。
その二日間を自分と過ごそうとする理由はなんなのだろう。
身体か?とも思うものの、セフィロスほどの男であれば、相手に不自由はしないだろう。
他に自分が持っているもので、価値のありそうなものは、副社長という地位だが、それとて、セフィロスにとっては、何の意味もないものだろう。
今まで、ルーファウスに誘いをかけてきた連中の思惑は、皆、とてもわかりやすかった。
神羅一族というステイタスであったり、神羅カンパニーの次期社長という将来であったり、金――といっても、ルーファウス自身の財産などはないのだから、結局は神羅の財産ということになるのだろうが――であったり、あるいは、ルーファウスの身体であったり。
だが、セフィロスは名声も金も、すべてを持っている。
ルーファウスが女ならば、まだ話はわかる。
結婚することで、神羅の一員となることができるだろうし、カンパニーを自分のものにできる可能性もある。
だが、あいにく自分は男だ。
それに、と思う。
あのセフィロスは、そういった俗世の欲望から切り離されているような雰囲気がある。
(もっとも、人間など、腹の中で何を考えているか、しれたものではないが)
とは思うものの、やっぱりよくわからなかった。
ルーファウスは、首を振った。
(まあ、別になんでもいいが。私は私の欲しいものを手にいれるだけだ)
端末を呼び出し、スケジュールを開き、何を優先させるべきかを考える。
明日のスケジュールを空けるためには、今、できるだけ仕事を消化しておかねばならなかった。

□■□■□■□

室内に足を踏み入れた途端、強く抱きしめられ、ルーファウスは目を瞬いた。
「セフィロス?」
「おまえを抱きたかった」
耳元でささやかれ、心臓が跳ねる。
そのとたん、また、身体の中心に受け入れたモノの感触を思い出し、ルーファウスは、カッと頬を火照らせた。
ずくり、と身体の深いところが疼く。そして、まぎれもない欲望の徴として、ルーファウスのモノは勃ちあがりかけていた。
セフィロスの唇が噛みつくように重なり、激しく貪られる。
その荒々しさは、前回の逢瀬ではなかったもので、ルーファウスは少し驚いて、近くにあるセフィロスの顔を見つめた。
セフィロスの唇が顎から喉に降りていき、ボタンをはずされシャツを肌蹴られながら、鎖骨、そして胸元へと降りていく。
そのまま、壁に押し付けられたかと思うと、ぐっと、セフィロスの腰が、ルーファウスの下腹部に擦りあわされた。
まぎれもなく硬くたちあがった昂ぶりが、ルーファウス自身に押し当てられる。
布越しにもわかる熱と硬さに、ルーファウスは、思わず、ごくりと喉を鳴らしていた。
「おまえが欲しくて、こんなだ」
セフィロスが囁く。
「明日の予定はどうした」
「キャンセルした」
セフィロスは、満足げに笑った。
「それなら、ゆっくり抱けるな」
目の前にある蒼く輝く瞳には、激しい欲望がほの見える。
だが、それと同時に、前にはなかった荒んだ光があることに気づき、ルーファウスは息を飲んだ。
それは、生きるか死ぬかの戦いをくぐってきた、軍人の目だった。
初めて会ったときの、血なまぐさいオーラが、また、セフィロスを包んでいるのを感じる。
そのことに、ルーファウスは、たとえようもなく欲情していた。
「戦場の匂いがするな」
ルーファウスは、囁いた。
セフィロスの眉がおもしろそうに上がった。
「そうか?」
「ああ……そそられる」
セフィロスの笑みが深くなる。
「戦場にいると、生存本能が高まるらしい」
「生存本能?」
「そうだ。自分の子孫を残したくなるらしい。要するにヤりたくなるということだな」
ルーファウスはくっと笑った。
「私は男だぞ」
「別に子孫などいらん。おまえが抱きたい」
セフィロスの声に、身体が震えた。
「……快感を教えてくれるのだろう?」
欲望に声が掠れ、声が喉にからんだ。
「ああ、教えてやる。覚悟しておけ」
セフィロスが、にやりと笑う。
その獰猛な男くさい表情に、煽られ、ルーファウスは自分から唇を寄せた。

□■□■□■□

「ん……ああ……」
長い指に、身体を広げられながら、ルーファウスはシーツを掴む指に力を込めた。
「知っているか?」
セフィロスが耳元でささやく。
「男でも、慣れれば、ここだけでイケるようになる」
「ここ……?」
「そう。ここで」
そう言いながら、セフィロスの指が激しく中をかき回した。
「あっ……ああ……っ……」
「ここだけで、女のようにイケるそうだ。おれは挿れられたことはないからな、よくわからんが、ものすごい快感らしいぞ。試してみるか?」
ルーファウスは、首を振った。
「……遠慮する……」
セフィロスが笑う。
だが、奥深くに埋め込まれていた指が、ゆっくりと引きだされ、浅い所でなにかを探るように動きだした。
不意に、その指が、体内のある一点を、ぐいと押し上げた。、
「んっ……」
押し出されるように、思わず声が出る。
「ここか?」
「……なに……」
「男が感じる場所だ」
体内に埋め込まれた指が、同じ場所を、何度も何度も押し上げる。
「う……や……やめ……」
痛いような、むず痒いような、なんともいえぬ異様な感覚に、あえぐ。
指がもう一本、差し込まれる。
2本の指に、さきほどの場所を抉るようにこすられ、ルーファウスは首を振った。
じわりじわりと、何かがそこから沸き起こり、腰に広がっていく。
「あ……っ…い……いや……だ……」
「感じるか?」
耳元で囁かれ、ずくりと身体の奥がうずく。
そこがきゅっと閉じ、受け入れている骨ばった指を締めつけた。
「ああ……っ」
同じ場所をこすられながら、閉じたそこを、ぐいぐいと広げられ、ルーファウスは全身を震わせた。
ふと、圧迫感が消え、ほっと息を吐いたのもつかのま、もう一度、さらに大きく入口を広げられ、指が突きこまれた。
3本の指に身体を開かれ、先ほどの場所を、抉られる。
「あっ……ああっ……」
足が震え、崩れ落ちそうになった腰を抱えあげられ、さらに激しく、かき回される。
「ああああっ……もう…っ……やめ……っ」
指先で、シーツを握りしめ、どうかなってしまいそうな感覚に必死で耐える。
ふと、セフィロスの指の動きが止まった。
「ルーファウス」
セフィロスの笑いを含んだ声が呼んだ。
「勃ってるぞ」
「……え……」
ルーファウスは、信じられぬ思いで、自分の下腹部に目をやった。
そこは、明らかに快感を示し、勃ちあがっていた。
「うそ……だ……」
ルーファウスは思わず、つぶやいた。
セフィロスが笑い、また、指が激しくルーファウスの身体をかき回す。
「や…っ…ああっ…」
「ここでイってみるか?」
ルーファウスは、必死で首を振った。
後ろだけでイクなど、冗談ではなかった。
「いや……だ……無理…っ…」
「いけそうだぞ」
セフィロスが、からかうように言う。
「……やめて……くれ……冗談…・じゃない……」
セフィロスは、くっと笑った。
「相変わらず、色気のないヤツだな。まあ、いい。またあとで、やってやる」
抗議しようと口を開き、だが、指がいきなり引き抜かれ、ルーファウスは呻いた。
「そろそろ、おれも限界だ」
後ろから腰を抱え直され、セフィロスの熱い怒張を身体の中心に押し当てられる。
次に来る激痛を予想して、ベッドについた両手でシーツを握りしめた。
だが、後ろから回されたセフィロスの手に、優しく中心を愛撫され、強張った身体から、知らず知らずのうちに、力が抜けていく。
そこを見計らうように、セフィロスの怒張が、ゆっくりとルーファウスの身体を押し開いた。
さんざん指で開かれた身体は、ゆるやかに広がり、押し込まれてくる楔を柔らかく受け入れた。
だがそれでも、楔が打ちこまれるたびに、ルーファウスの身体は、どうしようもなく強張った。そのたびに、セフィロスの指が、優しくルーファウスに快感を与え、柔らかく開いたところで、また少し、楔が打ち込まれる。
その繰り返しに、ルーファウスは喘いだ。
確かに痛みはない。
だが、そのやり方は、自分の身体に、セフィロスのモノが埋め込まれていく様子をまざまざと感じることになり、恥ずかしさにいたたまれなかった。
「セフィ…ロス……」
「どうした。痛いか」
ルーファウスは首を振った。
「……もう……いい……」
「なんだ?」
「大丈夫……だ……だから…・…」
セフィロスの動きがいったん止まる。
「そうか」
低い声が言い、大きな両手がルーファウスの腰を掴んだ。
「では、いくぞ」
ぐい、とセフィロスの腰が動き、身体をこじ開けられる。
「あああっ……」
次の瞬間、一気に、熱く硬い怒張を身体に突き込まれ、ルーファウスは背を反りかえらせた。
衝撃に、身体を支えていた両腕が崩れおち、シーツに這いつくばる。
その腰を強い力で引き寄せられ、さらに奥まで楔を打ち込まれた。
「……っ………」
ひどい圧迫感に息が詰まり、震える指で必死にシーツにしがみつく。
「……息をしろ」
耳元で囁かれ、唇を開く。
だが、まるでやり方を忘れてしまったかのように、息ができない。
腰を掴んでいた両手が動き、右手がルーファウスのモノにからみついた。
そっと撫で上げられ、ぞくりと背筋を走った感覚に、ふっと息が漏れる。
「そうだ。もっと息を吸え」
深い声に囁かれながら、大きく息を吸い込む。
そして、吐き出した瞬間、また、ぐぐっと楔が奥に進んだ。
「……あ……っ」
そのまま、ぐい、と突き上げられる。
そしてようやく、肌と肌が触れ合った。
セフィロスのモノが全て、収められたのだと知る。
「大丈夫か」
セフィロスが囁き、ルーファウスは小さくうなずいた。
身体を奥深くまで貫いているのは、一ヶ月前、その大きさと硬さで、あれほどルーファウスを苦しめた凶器だ。
だがいま、その凶器は、熱く脈打ちながら、ルーファウスの体内にぴたりとおさまっていた。
「動くぞ」
その言葉と同時に、ゆっくりと、埋め込まれた楔が動き始めた。
内壁をこすりながら、引き出され、また、ゆっくりと押し込まれる。
まるで、内臓をひきずり出されるような異様な感覚に、ルーファウスは唇を噛んだ。
痛みはないが、圧迫感と、身体の中心をこすりあげられるような感覚が苦しくてたまらない。
だが、信じられぬことに、ルーファウスの心とは別に、身体の方は、すぐにセフィロスのモノに馴染んだようだった。
突き込まれれば、奥へ奥へと誘い込むように、内壁が動き、引き出されれば、逃すまいとでもするように、粘膜がからみつく。
自分の身体の、信じられぬ動きに、ルーファウスは呻いた。
「おまえ、すごいぞ」
情欲に掠れたセフィロスの声が囁く。
「もっていかれそうだ」
その瞬間、ルーファウスの身体の奥深くに、じん、と疼きが走った。
「……んううっ……」
受け入れたたくましいモノを、自分が締めつけるのを感じる。
「……くっ……」
セフィロスが呻く。
「だめだ…行くぞ」
セフィロスが言い、ぐいと腰が打ちつけられた。
そのまま、激しく突き上げられ、ルーファウスは、なすすべもなく、めちゃくちゃに揺さぶられた。
「あっ…あう……っ…・・」
熱く硬い楔に、何度も貫かれ、セフィロスの硬い切っ先に、内壁を抉られる。
抉られるたびに、なにかが、背筋を走り抜けるのを感じる。
それは、明らかに快感だった。
下腹部に熱が集まり、いまにも、はじけそうだ。
ルーファウスは、シーツを掴んでいた右手を下ろし、自分自身に触れようとした。
だが、セフィロスに揺さぶられ、うまく触れられない。
ふと、骨ばった大きな手が、ルーファウスの右手を掴んだ。
そのまま、右手ごと、ルーファウスのモノを包み込む。
大きな手に、自分の手を動かされ、自分のモノを扱かされる。
「あああ…」
わかりやすい、馴染みのある快感に、ルーファウスは熱い吐息を漏らした。
だが、大きな手がルーファウスの右手を、引きはがし、骨ばった指が直接、ルーファウス自身にからまった。
強い力で、上下にしごかれ、快感が膨れ上がる。
巧みな指に追い上げられ、身体を奥まで開かれ、どうしていいかわからない。
身体が震え、背筋に快感が走る。
「セフィ……ロス……っ」
「いきそうか」
ルーファウスは、何度もうなずいた。
「おれもだ」
セフィロスの声も、さすがに切羽詰まったものになっていた。
「先にいけ」
セフィロスの指に強くしごかれ、先端を強く刺激される。
ルーファウスは、身体を震わせ、セフィロスの手の中に欲望をはじけさせた。
同時に、セフィロスを受け入れた部分が、きつく閉じる。
埋め込まれたものの熱を、大きさを、そして硬さを、まざまざと感じる。
「ああああああ………」
自分の体に、男を受け入れているのだということを、今更ながら思い知る。
あえぎながら、ルーファウスはさらにセフィロスの怒張を締めつけた。
「くっ………」
後ろで、セフィロスがうめく声が聞こえる。
やがて、身体の奥深くで、ふくれあがったセフィロスのものが弾け、欲望を吐き出すのを感じながら、ルーファウスはベッドに倒れ込んだ。

2011年5月6日 up

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