つかの間の夢 6

寝室に、荒い息遣いが響く。
ルーファウスは、ぐったりと、シーツの上に身体を投げ出したまま、目を閉じた。
身体の中には、まだセフィロスがものが埋め込まれたままで、腰も高く抱えあげられたままだが、そんなことすらどうでもいいほど、疲れ果てていた。
やがて、ゆっくりと、身体を貫いていたものが抜け出していき、ほっと息をついた。
だが、ふと、なにかがそこから流れ出したのを感じ、眉を寄せる。
粘つくものが、肌を伝わる生々しい感触。
セフィロスに出されたものが、流れ出したのだと気づき、その淫猥さにルーファウスは、唇を噛んだ。
だが、次の瞬間、目を見開く。
冷たい指が、再び、そこに触れてきたのだ。
ぐるりと円を描くように触れられ、ルーファウスは、身体を震わせた。
力の入らない手を突っ張り、なんとか身体を起こそうとする。
だが、腰だけを上げさせられたこの体勢では、それは無理だった。
長い指が、ゆっくりとそこに入り込むのを感じ、ルーファウスは喉の奥で呻いた。
それだけの刺激でさえ、敏感になった身体は快感を拾うらしく、身体の奥深くが疼くのを感じる。
ルーファウスは、唇を噛みしめた。
あり得ない、と思う。
本当に、これが自分の身体なのか。
まるで女の身体だ。
そう思いつつも、身体は快楽に従順だった。
埋め込まれた指を、緩やかに締めつけ、無意識のうちに腰が揺れるのを感じる。
ルーファウスは、首を振った。
「やめろ」
精一杯、平静な声を出し、自分を嬲りにかかっている指から逃げようと身体をずり上げた。
「疲れた。寝る」
だが、セフィロスの手から逃れることはできず、腰をさらに引き寄せられた。
指が奥に入り込み、ふるりと身体が震える。
「やめろ………もう、無理だ……」
「何を言っている。感じさせてやると言っただろう?」
セフィロスが、からかうように言う。
ルーファウスは、首を振った。
「もう、いい」
「冗談だろう。まだ、これからだ」
指の腹で入口を嬲られ、もう一本、指を突きいれられ、身体の疼きがひどくなる。
ルーファウスは、すでにくしゃくしゃに乱れているシーツを指先で掴み、手の甲に唇を押し付け、声をこらえた。
指を動かされるたびに、身体の中から、湿った音が響く。
中に残された、セフィロスの欲望の残滓が、音を立てているのだ。
自分がされたことを、まざまざと思い知らされ、頬が火照る。
不意に、指を引き抜かれ、腰を両手で掴まれ、ぐるりと身体を返された。
仰向けにされた身体を開かれ、抵抗もできず抑え込まれ、再び、指でそこを開かれた。
また、湿った音がして、ルーファウスは思わず、顔をそむけた。
頬が赤く染まっているのがわかったが、顔を隠すこともできず、唇を噛む。
セフィロスが小さく笑い、指を奥深くまで差し込むと、わざと音をさせて、そこをかき回した。
「……悪……趣味……だ」
喘ぎながら抗議したルーファウスに軽くキスを落とす。
そして、ふと、指をとめると、ルーファウスの耳元に口を寄せた。
「やるぞ。感じろ」
囁くと、ぐいと、指を押し上げた。
「んんっ…!」
思わず、声が漏れ、ルーファウスの腰が跳ねた。
自分の反応に驚き、目を瞠る。
セフィロスが、小さく笑い、また、そこを指で押し上げる。
「……んっ……」
また、腰が跳ね、全身が震える。
先ほど、さんざん指で嬲られた場所だった。
指が増やされ、その場所を、抉るようにこすられる。
「……んんっ……うっ……んっ……」
押さえようとしても、押さえようとしても、声が出る。
「いいか?」
ルーファウスを嬲りながら、セフィロスが囁く。
息があがり、勝手に腰が揺らめく。
だが、これが快感なのか、どうなのか、よくわからなかった。
ただ、こすられ、抉られるその場所から、じわじわとなにかが沸き起こり、腰に広がり、それが全身に広がっていくのを感じる。
それは、いてもたってもいられぬような、もどかしいような、感覚だ。
「勃ってきたな」
セフィロスに言われるまでもなく、自分自身が、勃ちあがりかけているのは、わかっていた。
つまり、これは快感なのだろう。
だが、それはわかりにくく、もどかしいもので、その感覚に煽られて、わかりやすい一直線の快感が欲しくてたまらなくなる。
それに、同じ快感を得るのでも、女のように、身体の中で得るよりも、普通に自分のもので快感を得る方が、まだ気が楽だった。
ルーファウスは、右手を伸ばし、自分のモノにからめた。
だが、その手をセフィロスに掴まれ、シーツに押し付けられる。
「触るな」
セフィロスが、意地悪く笑う。
「ここでいってみろ」
そういうと、指で、さらに、ルーファウスの身体の中をかきまわした。
「いや……だ…っ……やめ……っ」
何度も何度も、そこを押し上げられ、抉られる。
抵抗しようとした左手もセフィロスに掴まれ、両手をまとめて、シーツに押し付けられる。
逃れようともがいても、その大きな手は、びくともしない。
手首が砕けそうな力で抑え込まれ、ルーファウスは、痛みに息を飲んだ。
セフィロスの、本当の力を思い知る。
考えてみれば当たり前だった。
これは、長大な武器を軽々と扱い、目の前の敵を次々と屠っていく英雄の手だ。
今まで、どれだけ自分が手加減をされていたかを思い知る。
いや、これですら、セフィロスは手加減をしているのかもしれなかった。
ふと、その手が離れ、ルーファウスは、ほっと息をついた。
体内に埋め込まれていた指も引き抜かれ、圧倒的な質量をもったものをそこに宛がわれた。
そのまま、一気に貫かれ、ルーファウスは唇を震わせた。
奥まで押し込まれたものが、ぎりぎりまで引き抜かれ、またぐいと押し込まれる。
その瞬間、ルーファウスの身体が、衝撃にはねた。
また、あの場所だった。
「あああっ……」
思わず、ほとばしった声に、ルーファウスは目を見開いた。
あわてて、右手で口を覆う。
その声は、自分でもはっきりとわかるほど、艶めいた、女のような声だった。
なぜこんな声が出るのかわからなかった。
「いい声だ」
セフィロスが、皮肉めいた笑みを浮かべ、ルーファウスの手を、覆った口からひきはがした。
「セ…フィロス…!」
抗議に耳も貸さず、ルーファウスの手を掴んだまま、ゆっくりと腰を引いていく。
ルーファウスは唇を噛んで、その感覚に耐えた。
セフィロスが笑う。
次の瞬間、また、たくましいモノが突き込まれ、あの場所を抉られ、ルーファウスは唇をかみしめたまま喉をのけぞらせた。
喉の奥でうめき声が漏れる。
「声を出せ」
セフィロスが苦笑する。
だが、ルーファウスは首を振った。
それは、もう、はっきり快感として、ルーファウスにも感じられていた。
信じられないことだが、身体に受け入れたものに抉られるだけで、自分の身体は快感を拾っているのだ。
だからこそ、余計に、女のような嬌声を出すことなど、我慢できなかった。
また、ゆっくりと、怒張が抜け出していく。
そして、ぎりぎりまで引き出され、ルーファウスの身体が閉じたところを、またこじ開けられる。
硬い切っ先が、明確な意図をもってその一点を抉り、奥まで突き込まれる。
ルーファウスは、うめきながら必死に耐えた。
「強情だな」
とうとう、セフィロスがあきれたように言った。
「 声ぐらい、出せばいいだろうが」
「……あんな……女みたいな声……出してたまるか……」
ルーファウスが言うと、セフィロスは、くっくっと笑った。
「本当に色気がない奴だな」
「……うるさい……」
「だが、あいにく、おれはおまえの声が聞きたいんだ」
セフィロスは、にやりと笑うと、唇を重ねた。
ディープに貪られ、ルーファウスは、喘いだ。
そして、そのまま、セフィロスの身体が動き出す。
先ほどまでのような大きな動きではなく、浅いところだけで抜き差しを繰り返される。
太く硬いものに何度も何度もそこを抉るようにこすりたてられ、ルーファウスは身体を震わせた。
唇を噛もうとしても、セフィロスの唇に貪られ、それもかなわない。
そこを突かれるたびに漏れる声が、セフィロスの口の中に吸い込まれていく。
突然、セフィロスの唇が離れた。
そのまま、さらに激しく身体を揺さぶられ、ルーファウスは惑乱した。
「あっ……あっ……ああっ……!」
高い声が室内に響く。
これが自分の声だなどと信じたくない。
だが、明らかにその嬌声は自分の喉からほとばしるように出ており、押さえようと思っても、もう口を閉じることすらできなかった。
腰を掴まれ、何度も何度も、 突き上げられ、抉られる。
そこを抉られる快感と、内壁をこすりあげられる快感、そして身体の奥の奥まで開かれる快感。
すべてが入り混じり、あまりの快楽に、涙がぼろぼろと零れ落ちてくる。
全身が震え、明らかに、自分の身体が絶頂に向かってかけあがっているのがわかる。
「……や……いや……だ…っ…」
「いけ。ルーファウス」
「……いや……だ…っ…ああ……っ」
必死で首を振る。
だが、限界まで追い上げられた身体を止めることなど、できはしなかった。
「あああああああっっ」
叫び声をあげ、背をのけぞらせる。
駆け巡った絶頂感に、目を見開き、息を詰める。
全身が、ぴんと張り詰め、息もできずに唇を震わせる。
セフィロスを受け入れた部分がきつく締まり、埋め込まれたモノの存在をありありと感じながら、ルーファウスは、身体を痙攣させた。
だが、セフィロスの身体の動きは止まらなかった。
震えながら絶頂を極めている身体を、さらに、奥へ奥へと、開いていく。
「あ……っ……あっ………」
きつく締め付ける部分を、強引にこじあけられながら犯され、ルーファウスは掠れた悲鳴をあげた。
「も……やめ……っ………ああ……」
首を必死で振り、やめてくれと叫ぶ。
だが、セフィロスは容赦なかった。
硬く熱いものが、何度も打ちこまれる。
もう、なにがなんだかわからなかった。
やがて、セフィロスが低く呻く。
ルーファウスを犯すものが、体内で質量を増すのを感じる。
そして、ぐいと、それが最奥まで、激しく突き込まれた。
「……っ……!!」
あまりの衝撃に声も出せない。
身体の奥底からなにかが沸き起こり、全身を粟立たせる。
それは、恐ろしいほどの快感だった。
身体の奥深くで、セフィロスのたくましいものが、何度か震え、精を吐きだす。
その動きすら、激しい快感となって、ルーファウスを襲う。
ルーファウスは、奔流のような快感に、がくがくと身体を震わせた。

ゆっくりと、快感が引いていく。
ルーファウスは、詰めていた息を吐き、全身の力を抜いた。
だが、大きな手に、一度も触られなかった自分自身を包み込まれ、目を開いた。
そして、驚きに目をみはる。
それは、まだ、硬く勃ちあがったままだった。
「……な…ん……」
ルーファウスは、絶句した。
つい先ほど、射精したはずだった。
セフィロスは、小さく笑った。
「後ろだけでいったな。次はこっちだ」
そういうと、セフィロスは自分自身を埋め込んだまま、ルーファウスの中心をなであげた。
「……やめ……」
手でセフィロスを押しのけようとするものの、もう疲れ果て、手をあげることすらできなかった。
セフィロスの手に愛撫されるままに、飲み込んだままの場所が、ぐっぐっと収縮を繰り返すのを感じる。
そのたびに、セフィロスのものをしめつけ、次第に、それが力を取り戻していくのを、まざまざと感じる。
脈打つものがゆっくりと動き出し、中から、身体を押し広げられる。
身体の中のものが、大きく硬くなっていくのを感じながら、ルーファウスはあっけなく射精していた。
不意に、肩を掴まれ、身体を起こされる。
その動きに、また快感が走り、身体が震える。
力の入らない腕をとられ、セフィロスの首に回される。
「つかまってろ」
言われるままに、セフィロスにしがみつけば、腰を持ち上げられ、座ったセフィロスの上に乗せられた。
「んっ………」
抜けかけたそれを、再び押し込まれ、肩を上からぐいと押される。
腰をゆすられ、ぐぐっと奥深くまで入り込んできたものに、また強く抉られる。
ルーファウスは、背筋を震わせ、セフィロスの首にしがみつき、声も出せず、息を詰めた。
「また、いったか?」
からかうようなセフィロスの声にも反応できない。
もう、抵抗する気力も、力も残っていなかった。
腰をつかまれ、ぐいと抱き寄せられ、ぴたりとセフィロスの身体と密着させられる。
ゆっくりと上下にゆすられ、身体の中を抉られる。
同時に、セフィロスの鍛えられた腹筋に、自分自身をこすられ、声をあげる。
もう、自分がどちらで感じているのかも、わからない。
いつの間にか、自分から腰を揺らし、快感を追いかけていることに気づいたが、もはやどうすることもできなかった。
「ルーファウス」
名を呼ばれ、顔をあげる。
顎を掴まれ、唇を重ねられ、身体を揺さぶられながら、抱きしめられる。
その、思いのほか優しい腕に抱かれながら、ルーファウスは、また、精を放っていた。

2011年5月8日 Up

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